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65歳以上の高齢者が増えるにつれ、「家庭内事故」も増えています。浴室での転倒や階段からの転落、あるいは食べ物を喉に詰まらせるといった問題です。高齢になり反射神経や身体機能が低下すると、どうしても事故のリスクは高くなってしまいます。事故を減らすためには、原因や背景を分析し、高齢者の目線に立った対策が大切です。
こちらの記事では、高齢者の家庭内事故の具体例とその原因、対策についてご紹介しています。自分たちだけで対策をとるのが難しい場合は、見守りサービスの活用も検討してみてください。離れて暮らす高齢のご家族の生活をサポートし、いつでも安否確認できるサービスです。
家庭内事故とは、自宅の居室や廊下、浴室、トイレ、庭など、生活空間に身を置きながら直面する事故をいいます。大きな規模でいえば、火事に見舞われたり、地震や台風などの天災の直撃を受けたりして損害を被るケースがあります。
家庭内事故は、そのような大きな事故ばかりとは限りません。
例えば、風呂場で転んだり、階段で足を踏み外して落ちたりするなど、不注意が原因による事故もあります。実はこれら日常生活のなかで起こる事故の発生件数は交通事故よりも多く、死亡に至るケースも珍しくありません。
年代別でみると、65歳以上の方の家庭内事故で亡くなる割合がもっとも高いことがわかっています。
内閣府が公表する『平成30年版高齢社会白書』によると、65歳以上の方の家庭内事故はほかの世代と比べて多発しやすい傾向にあります。なかでも、居室内での事故が全体の45.0%と突出しているのが特徴です。
出典:内閣府「平成30年版高齢社会白書」
また、厚生労働省の令和2年(2020)『人口動態統計(確定数)の概況』の統計表をみると、高齢者の「不慮の事故」の死者数が35,000人を超えています。ここでいう「不慮の事故」とは、自然災害や交通事故をのぞくケースで、具体的には「誤嚥などの不慮の窒息」「転倒・転落」「不慮の溺死および溺水」などです。これら高齢者による不慮の事故死は交通事故死より多く、平成22年(2009年)以降は毎年30,000人を超えているとのことです。
家庭内事故や不慮の事故で亡くなられる高齢者が増えた原因の一つに、高齢者人口の増加が挙げられます。日本の人口構造を考えた場合、全人口に占める65歳以上の割合は今後も増加していくことが予想されます。それに比例して事故の犠牲者が増えていく情勢に注視しなければなりません。事故を0にはできませんが、対策を怠らないことで減らすことはできます。加速する高齢化社会に適応するための対策が今後一層求められるでしょう。
出典:厚生労働省「『人口動態統計(確定数)の概況』統計表(死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率)」
高齢者に多い家庭内事故の具体的事例として以下のようなケースがあります。
独立行政法人国民生活センターの報告によると、高齢者の家庭内事故の原因としてとくに目立つのが「転倒・転落」で、全体の6割を占めるとのことです。この傾向は年齢が上がるにつれて高くなります。
「階段の2段目で転倒し、臀部と後頭部を強打」「トイレから廊下に出た際に転倒」「庭木を剪定作業中、梯子から転落」などの報告例があります。
階段や屋根など高い場所からの転落がある一方で、立ち上がりでよろめいたり、床を歩いているとき突然倒れたりするといったケースもあります。また、身近な生活用品が原因の転倒例も少なくありません。「こたつの布団につまずいて転倒」「掃除機のコードにつまずいて転倒」などは、高齢になると足腰が弱くなることから起こります。高齢者特有の身体機能に合わせた対策が必要です。
火傷や熱傷、誤飲・誤嚥などの事故例も多く報告されています。飲み込んだものが空気の通り道(気管)に誤って入る誤嚥、おにぎりや団子などの食べ物を喉に詰まらせて死亡するケースもあります。また、漂白剤や除草剤などの薬剤を誤飲する事故も報告されています。
他にも熱湯の入った浴槽に転落、あるいは衣類への着火で起こる火傷も。仏壇のろうそくやガスコンロなど、家庭内には不注意から着火の原因になるものも多く、注意力や身体機能が低下した高齢者ほど死亡リスクが高いでしょう。
上記の通り、高齢者の家庭内事故の例として、階段や風呂場・トイレでの転倒、屋根から転落、浴槽での溺死などが多くなっています。これらの事故原因を踏まえ、対策が必要です。以下、場所や原因別に対策をご紹介します。
転倒事故の防止対策として有効なのが、「手すり」の設置です。とくにすべりやすい浴室や、立ち上がり動作が必要なトイレへの設置が望まれます。
リスクが高く大きな事故につながりやすい場所への手すり設置は、高齢者にとって大きなセーフティネットになります。
手すり設置のほか、「段差をなくす」「足元に照明をつける」「すべりやすい靴下やスリッパははかない」なども転倒防止に役立ちます。
屋根や梯子から転落して大けがを負う重大事故も発生しています。一歩間違えれば最悪死亡事故、死に至らなくても障害が残るなどして、その後の生活に大きな支障が生じる可能性もあります。細心の注意を払う対策が不可欠です。
脚立や梯子を使って屋根に上がる高所作業では、高齢者本人は遠慮して誰かに任せるのが得策です。代役となる家族がいればその人に任せ、代われる人がいなければ専門業者に頼むといった方法を検討しましょう。どうしても本人が屋根に上がらなければならないときは、単独での作業は絶対に避け、ペアを組むなどして安全対策に努めてください。
浴室は転倒事故ばかりでなく、浴槽での溺死や火傷、ヒートショックなど、高齢者にとってリスクとなるファクターが潜んでいます。実際に死亡に至るケースも多発していることから、事故は起こるとの前提に立って浴室の環境を整える対策が求められます。
ヒートショックは浴室と脱衣所の寒暖差が原因で起こります。心臓への負担を避けるために、入浴はなるべく家族の後にしたほうがよいでしょう。事前にシャワーで給湯して浴室を温める方法も有効です。費用はかかりますが、暖房のある浴室に改装するのもヒートショック防止につながります。
火傷を防止するには、給湯やシャワーの温度が高くなりすぎないよう温度設定に気を配るのが大事です。
浴槽で溺れる事故の原因には、「飲酒後の入浴」があります。お酒を飲んで下がった血圧は、入浴でさらに下がってしまいます。これが原因で気を失い溺れてしまうのです。飲酒直後の入浴にはそれ以外にも、脳貧血や不整脈、心臓発作などを引き起こすリスクがあるため、入浴前にはお酒は避けたほうが無難です。
調理中にコンロの火が裾や袖口に着火する事故も、高齢者の間で頻発しています。着衣着火がどのような状況で起こるかといえば、「火をつけたまま鍋を動かす」「ガスコンロに近づきすぎる」「火のついたガスコンロにもたれかかる」など、火に充分な注意が向かず事故を引き起こしているようです。
高齢になるとガスの青い火が見えにくくなるともいわれており、これが事故の原因につながっているのかもしれません。
着衣着火を防止するには、確実に火を止めてから調理中の鍋を動かすことを徹底しましょう。調理の際は、裾の長い衣服や袖口の広い服の着用は避け、防炎エプロンやアームカバーを活用するようにしてください。日本防炎協会の認定を受けた製品は、火が燃え広がりにくい衣服として定評があります。
マフラーをしたり、厚手の服を着こんだりする冬場はとくに注意が必要です。重大事故を引き起こさないためにも、調理の際は安全対策を何より重視してください。
餅や団子などの食べ物を、喉に詰まらせ窒息死する高齢者も少なくありません。窒息事故を防止するには、食べると同時にお茶や水も適度に口に含むこと。飲み物を流し込んで喉を湿らせ、ゆっくりよく噛みながら少しずつ胃の中へ入れていくのがポイントです。
餅などの噛みにくい食べ物は、小さく切り分けてから食べるようにしましょう。このとき、周囲の人の気配りも大切です。食べている際中に話しかけると、噛むのがおろそかになり、よく噛まないで飲み込む恐れがあります。なるべく会話は控え、食事に専念させてあげるのが賢明です。
家庭内事故のリスクやトラブルから高齢者を守るには、上記で説明したような対策が有効となります。ただ対策があったからといって事故を100%防げるとは言い切れません。一人暮らしをする高齢者ならなおさらリスクは高くなり、万全を期した対策が求められるでしょう。
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高齢者とそのご家族にとって、家庭内事故は深刻な問題です。食事中や入浴中、階段の上り下りにも危険が潜んでいます。梯子からの転落やヒートショック、浴槽での溺死、食べ物を喉に詰まらせる事故にも注意しなければなりません。高齢者につきまとう家庭内事故のリスクを軽減するには、事故がいつ起きてもおかしくないとの前提のうえで対策を進めていく姿勢が重要となります。
具体的には、「トイレ・浴室・階段・廊下に手すりを設置」「段差をなくし、足元灯とつける」「高所作業は家族やプロに任せる」「着衣着火を防ぐため防炎性のエプロンやパジャマを着用する」などの対策があります。一人暮らし、あるいは一人で留守番をすることの多い高齢者に対しておすすめは見守りサービスの活用です。急病やケガで倒れたとき、すぐに現場へ駆けつけるサービスがあるため安心できます。
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