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認知症の症状の一つである徘徊。徘徊は交通事故や行方不明などのリスクがあるため非常に危険です。ここでは、警視庁や厚生労働省の資料をもとに、認知症による徘徊の原因や対策方法についてご紹介します。
なお、「徘徊」という言葉については、「一人歩き」等への言い換えが進んでいる現状もあります。
このコラムでは、一般に徘徊とみなされるケースについて記載しております。
警視庁が発表したデータによると、令和5年のうちに全国の警察に届け出があった認知症や、その疑いによる行方不明者数は、統計をとり始めた平成24年以降最多となる、約1万9千人にも上りました。
出典:警察庁生活安全局人身安全・少年課「令和5年における行方不明者の状況」
認知症による行方不明者数は年々増加しており、徘徊は大きな社会問題になっています。
政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」を参考に、認知症による徘徊とはどのようなものなのかご説明します。
徘徊とは、認知症の行動・心理症状の一つです。
認知症の症状は、「中核症状」と「認知症の行動・心理症状」に大きく分けられ、徘徊は認知症の行動・心理症状に当てはまります。認知症の行動・心理症状は「BPSD (Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」とも呼ばれ、本人の認知機能の低下や短期記憶の障害などが主な原因で起こります。
徘徊と聞くと、目的や理由もなくうろうろと歩き回っているように思うかもしれません。しかし、本人にはしっかりとした理由があって外出をしたのに、目的地や帰り道がわからなくなってしまうことが、BPSDとしての症状といえます。
徘徊には、転倒による外傷や骨折、交通事故などのリスクがあります。夏は熱中症、冬は低体温症を引き起こす可能性もあり、地域によっては用水路などへの転落といった事故事例もあります。
症状によって、危険な場所や気温に対する認識が低下するため、発見時間が遅くなるほど危険性も高くなります。徘徊は昼夜問わず起こり、とくに夜間の徘徊は本人だけでなく介護者にとっても負担が大きいため、安全を確保するための対策が必要です。
認知症の徘徊に大きく関わっているのが、身体的要因・環境的要因・心理的要因です。徘徊の対策を行う前に、まずはなぜ徘徊が起こるのか原因を確認しましょう。
徘徊が起きる原因として多いのが、空腹や眠気、のどの渇きや痛みなど、身体的な要因です。
身体的要因が原因の徘徊であれば、食事を用意したり、入浴をうながしたりすることで、落ち着く可能性があります。
環境的要因とは、場所や明るさ、見える景色や周囲にいる人、温度/湿度や時間帯などです。
認知症の人は環境の変化に順応しにくいため、自分のいる場所に覚えがないと感じると、居心地の悪さなどの環境的要因から徘徊が起こる場合もあります。
環境が変わると混乱しやすいため、本人が落ち着く居心地の良い空間を作ることが大切です。介護が必要な状態であれば、できるだけ環境を大きく変えないようにしましょう。
不安や心配、悲しみや孤独感などの心理的要因も、徘徊が起こる原因の一つです。
認知症の人が夕方になると落ち着かなくなり、外に出ようとするケースがよくあります。元々は、記憶障害や見当識障害などの認知障害によるものですが、そこに不安や焦りといった心理的要因が加わることで、徘徊が起こってしまいます。
たとえば、夕飯の準備や子供のお迎えなどの過去の習慣を再現したくなり、外に出てしまうのです。このようなケースでは、本人を否定しても意味がありません。普段から様子を観察し、行動に至った理由を聞き出して安心させることで、徘徊の改善につなげられます。
出典:認知症ケア法-認知症の理解「認知症の人とのコミュニケーションとは?」
認知症やその症状において、予防法は未だ確立されていません。
しかし、徘徊がなるべく起こらないようにする対策として、日ごろから取り組めることはあります。
趣味や仕事を持つなど、やるべきことがあるとよいでしょう。
庭やベランダの掃除や植物への水やり、洗濯ものの取り込みなど、簡単かつ日常的な作業がおすすめです。何かの役に立つことや環境の美化によって自己肯定感が満たされ、自分の居場所だと認識できるようになると、心を平穏に保てることでしょう。
認知症になると昼夜逆転が生じやすくなるとされており、夜間の徘徊は本人の安全、介護者の体力と、双方に大きな負担となります。
夜はしっかり睡眠を取れるように、生活リズムを整えることが大切です。
日中に適度な運動をすると、脳に刺激を与えるだけではなく、ほどよく体を疲れさせます。
無理のない範囲で運動してエネルギーを発散させ、疲労感や充実感を得ることで、外に出たい衝動が改善する可能性があります。
徘徊が起きたら無理に止めるのではなく、できるだけ一緒に歩いてみましょう。歩いているうちに徘徊している理由を忘れたり、外出する目的を達成できたことで気持ちが落ち着いたりすることがよくあります。
事故や迷子防止のため必ず誰かが付き添い、家の中であっても転倒などの事故が起こらないように見守ってください。
安全な外出先があれば、外に出る体力を維持したり、地理感覚を保って道に迷うリスクを軽減したりできます。
たとえば、デイサービスや老人福祉センターなど、本人に合った外出先を見つけ、安全に外出する機会を増やしましょう。
玄関や窓にセンサーを取り付けておけば、外出にいち早く気づけます。
もっと単純に、ドアを開けると音で知らせてくれるようなベルやチャイムの設置も有効です。外出にいち早く気づけるための用意があれば、早期発見を期待できます。
認知症かな?と思ったら、地域や自治体との連携が欠かせません。
かかりつけの医師や病院、地域包括支援センターなどに相談をすることで適切な支援を受けることができるでしょう。
また、普段の生活ではお店で買い物をしたり、地域の集まりに参加することで、地域住民同士の連携が可能となります。
体力があり、歩いて遠くへ出かけてしまうケースでも、保護された先で本人確認ができれば早期発見が可能です。
たとえば、名前や連絡を書いた名札を作り、普段から身に付けている上着や帽子などの人目につく場所に縫い付けておくことで、市民による早期発見が期待できます。
出典:見守り・SOSネットワーク - NPO法人 シルバー総合研究所「認知症にやさしい地域づくりネットワーク」
見守りネットワークとは、日頃から見守りが必要な高齢者などに対して、地域の人が協力して見守りや声掛けなどを行う活動です。
事前に氏名や生年月日、顔と全身の写真や外出コースなどの情報を登録しておくことで、異変が起きた際に地域の人に気づいてもらいやすくなります。
たとえば、大阪市では認知症の人が行方不明になった際に、地域の協力者にメールを配信し、早期発見・保護につなげています。活動の内容は自治体によって異なるため、お住まいの自治体に確認してみましょう。
出典:消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)総合情報サイト-消費者庁
出典:認知症高齢者等見守りネットワーク事業を実施します-大阪市
「落とし物防止タグ」や「位置情報がわかるグッズ」も、徘徊対策に欠かせないアイテムの一つです。GPS機能のついた端末などを持たせておけば、気がつかないうちに外出してしまっても、すぐに位置を把握できます。
これらのアイテムは年々小型化されているため、本人が持つことを嫌がっても、いつも使っているバッグや財布、上着や靴に入れておくことが可能です。
自治体によっては、GPS機器の貸し出しを行っている場合もありますので、アイテムを購入する前に一度自治体のホームページを確認してみましょう。
出典:ハンドブック - 厚生労働省「コラム⑤ │どこにいったかな〜?をグッズで解消」
出典:行方不明を防ぐ・見つける市区町村・地域による取組事例「群馬県高崎市 GPS機器の貸出から捜索・保護までを無償にし救援を促進」
行動・心理症状によって起こる徘徊は、年齢や性別を問わず、誰にでも起こる可能性があるでしょう。実際に徘徊が始まったときに何も対策をしないと、事故や事件などに遭遇する危険性が高まります。
徘徊が始まったときの対応方法と、注意したいポイントをご紹介します。
徘徊に対しては、決して怒ったり責めたりしないことが大切です。
認知機能の低下や短期記憶の障害が見られる症状である場合は、なぜ自身が怒られたり責められているのか、その理由を認識できない可能性があります。一方で、怒られた際に感じた嫌な気持ちだけは残ることがあります。
不快な感情が残って介護者への不信感が募ると、ストレスによる症状の悪化のおそれがあるため注意が必要です。
徘徊を否定しないことも大切です。
はたから見れば、ただ意味もなく歩き回っているように感じられますが、本人には一人での外出(徘徊)に至った、明確な理由があります。ただし、本人ではない第三者が理解することは容易ではありません。
否定されると、怒られたときと同じく嫌な感情だけが残るため、介護者への不信感につながります。
徘徊させないためには、気をそらすことも有効です。
たとえば、「家に帰らないといけない」と外出しようとする人に、「お迎えを頼んだから到着するまでお茶でも飲んで待とう」とお茶をすすめたり、「外出するならコートを着よう」と別の行動につなげたりします。
他に気をそらすことによって、外出しようとする気持ちが収まり、納得してくれることもあります。
徘徊する本人には歩き回る理由があるため、なぜ外出する必要があるのか理由を聞いてみましょう。会話することで徘徊するヒントを見つけられ、解決につなげられるかもしれません。
徘徊する理由がわかれば、原因の究明や解決ができるかもしれません。また、じっくりと話を聞いているうちに本人の気持ちが落ち着き、自ら納得して外出をやめる(徘徊しなくなる)場合もあります。
時間に余裕がある場合は、徘徊に付き添うことも効果的です。一緒に歩いているうちに外出の理由や目的に満足し、落ち着くこともあります。
ただし、人によっては付き添いを「監視されている」と感じる人もいるため、状況に応じて、少し距離を置いて見守るなどの工夫をしましょう。
拘束して無理に徘徊をやめさせようとすると、「邪魔をされた」と感情的になったり、逃げ出したりするので非常に危険です。
本人の安全を確保したうえで、自由を妨げないように配慮しましょう。無理に引きとめるのではなく、気持ちを落ち着かせることが大切です。
万が一徘徊が起きてしまった場合、どのように行動すればいいのでしょうか?
十分に注意していても、徘徊が起きてしまうこともあります。認知症の徘徊は、行方不明や交通事故など命の危険もありますので、早急に下記の対処を講じてください。
ためらわずに警察に捜索願を出してください。日が暮れ始める夕方や夜間、真夏や真冬などの徘徊は、命の危険があります。
警察は交通量の多い場所などの危険な場所を把握しており、組織的な機動力と連携によって、安全かつ迅速な発見・保護を期待できるでしょう。
捜索願を出す際には、服装や身体的な特徴、写真などの情報を提供することで、早期発見につながります。
警察に捜索願を出したあとは、地域包括支援センターに相談してください。
自治体によっては「認知症の見守り・SOSネットワーク」を活用し、行方不明時に迅速に捜索を開始できる体制が整っている場合があります。行政や警察、地域住民が連携しているため、早期発見につなげられるでしょう。
ただし、自治体によって取り組みが異なり、事前登録が必要な場合もあるので、自治体や地域包括支援センターにあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
介護サービスを利用している場合は、介護サービスの事業所や担当者への連絡も有効です。
介護サービスの事業者や担当者は介護のプロなので、対策方法や捜索のコツをアドバイスしてくれます。
警備会社が提供する見守りサービスを利用している場合は、GPS機器があれば、居場所を確認できるかもしれません。パトロール員が駆けつけるサービスを提供している見守りサービスもあり、24時間365日見守ってくれるので、介護者の負担を減らせます。
見守りサービスを利用している場合は、外出した際や自宅から離れた際に連絡が来るため、早期発見に大いに役立ちます。
自分1人で探そうと、車で周辺の捜索に行くことは非常に危険です。
運転に集中できない状態で車を走らせることは、交通事故を引き起こしてしまうおそれがあります。
車が必要な捜索は警察に任せ、徒歩で探せる住宅周辺や公園などにいないか、近所の人に協力してもらう方法があります。一緒に探してもらうことによって、介護者自身も不安な気持ちを1人で抱え込まずに済むでしょう。
買い物に利用している商店やショッピングモール、公園や駅・バス停といった交通機関など、本人が立ち寄りそうな場所を探しましょう。
なじみのお店や場所がある場合は、あらかじめ徘徊する可能性があることを伝えておくと、早期に発見しやすくなります。
認知症の徘徊は、行方不明や交通事故など命の危険もあります。ご家族だけで徘徊対策をしようとしても難しい場合もあるため、自治体の福祉サービスや介護の専門職に相談することをおすすめします。また、センサーやGPSなど、介護の負担の軽減に役立つさまざまな介護対策アイテムもありますので、ぜひ活用してみましょう。
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